これまでため込んだ動画や写真を家族に共有したいけど50GBもある。一時的に50GB程度の大容量ファイルをクラウド上にアップロードし、限定された相手にダウンロードしてもらいたい。なるべくコストを抑え、ダウンロード手順は簡単なものにします。
Cloudflare R2
グローバルな CDN およびセキュリティ基盤を提供する Cloudflare 社が展開するオブジェクトストレージサービスです。Amazon S3 と互換性があり、ファイルの保存・配信に適した構成を持ちながら、より低コストである特徴があります。
👉オブジェクトストレージサービス
データをオブジェクト単位で保存し、フラットな構造とメタデータ管理を特徴とするストレージ。S3やCloudflare R2のような高スケーラビリティとAPI連携に優れた用途に用いられる。
一方、OneDriveやGoogle Driveのような階層的にファイルを管理するサービスは、ユーザーが直接ファイルを扱うことを前提としたファイルストレージと呼ばれる。
👉Amazon S3と互換性がある。
Cloudflare R2がS3と同じAPIや認証方式・操作体系を採用しており、ツールやアプリが簡単に移行・併用できるという意味。
転送料が完全無料
Cloudflare R2 の最大の特長は、egress(外部への転送)が完全に無料である点です。一般的なクラウドストレージ(AWS S3、Azure Blob Storage、Google Cloud Storageなど)では、外部からのダウンロードに応じて従量課金が発生しますが、Cloudflare R2 ではファイルサイズや回数にかかわらず、ダウンロードによる課金は一切ありません。 たとえば、50GBのファイルを1回ダウンロードされる場合、他クラウドでは数百円の転送料が発生しますが、Cloudflare R2 ではこの部分が無料で済みます。個人的なファイル共有にCloudflareを利用する最大の理由です。
操作の簡便性と共有の容易さ
アップロードしたファイルに対してHTTP経由でアクセス可能なURLを発行することが可能です。URLを相手に伝えるだけで即座に共有が可能となります。また、操作はすべてWebブラウザ上から行えるため、導入時に特別な知識を必要としません。必要に応じて、コマンドラインツールを併用することで、自動化や大容量転送にも対応できます。
ツールとの互換性と柔軟な運用性
Cloudflare R2 は S3互換API を採用しており、rclone
や aws-cli
などの標準ツールで操作できます。これにより、コマンドラインからのアップロード・削除、スクリプトによるバッチ処理、CI/CDとの連携など、柔軟な運用が可能です。
料金体系(2025年5月時点)
保存料金と無料枠
Cloudflare R2 には10GBまでの無料保存枠が用意されています。それを超えた場合でも、保存料金は1GBあたり約0.015ドル(日本円で約2円)/月と非常に低価格であり、50GB程度の一時利用であれば数日~数週間保持しても数十円程度に収まります。
💰 各サービスで50GBを1カ月間保存した場合。東京リージョン。
Cloudflare R2が約0.75ドル、Azure Blob(Hot Tier)が約0.92ドル、Google Cloud Storage(Standard)が約1.00ドル、AWS S3(Standard)が約1.25ドル。
Cloudflare R2が最も安価です。
転送量の無料
外部へのダウンロードは完全に無料です。一度きりの共有であっても、ダウンロードが大容量になると従来のクラウドでは高額となりがちですが、Cloudflare R2 では無料で配布できます。
💰 50GBのファイルをダウンロードしてもらう場合。
Cloudflare R2なら転送は完全に無料。
他サービスではAWSで約7ドル、Azureで約4.4ドル、GCPで約6ドルかかります。
APIリクエストの簡易課金体系
Cloudflare R2 では、API経由の操作(例:アップロード、ダウンロード)にも課金単位がありますが、無料枠が非常に広いため、少量利用であれば実質的に無料で利用可能です。
- クラスA操作(
PUT
/POST
/COPY
/LIST
):100万回あたり $4.50ドル - クラスB操作(
GET
/HEAD
):100万回あたり 約0.36ドル DELETE
は 無料
毎月 クラスA操作100万回、クラスB操作1,000万回までの無料枠があり、 通常の利用では課金がほとんど発生しない。
利用手順
- Cloudflare アカウントの作成
- R2バケットの作成
- バケットの公開設定(public)
この設定により、アップロードされたファイルがHTTP経由でアクセス可能となります。
リンクは外部に通知しない限りアクセスされることはないため、URLの秘匿そのものが簡易なアクセス制御として機能します。
ファイルのアップロード
A. 管理画面からの直接アップロード(手軽だが制限あり)
作成したバケットを開き、ドラッグ&ドロップでアップロード可能。 ただし、ブラウザ経由だとアップロード可能なファイルサイズに制限があり、数百MBを超えるファイルではCLIツールの利用が必要となります。
B. rclone
を用いたアップロード(安定・高速)
rclone
は S3互換のクラウドストレージ操作を得意とするCLIツールで、Cloudflare R2 にも対応しています。設定後、以下のようなコマンドでファイルをアップロード可能です。
rclone copy ./largefile.zip cloudflare:temp-share-0501
アップロード後、自動的にR2上に保存され、Public Accessが有効であればURLも即座に利用できます。
共有リンクの取得と送信
管理画面からアップロードしたファイルの個別にURLが確認できます(当該バケットの設定でr2.devサブドメインを別途有効。)。当URLをそのまま相手に供すればブラウザ経由でも50GB以上のファイルをダウンロードできました。URLが第三者に知られない限りアクセスされることはなく、リンクを共有しない限り実質的に非公開の状態を保てます。誰かにファイルを盗み見られる可能性はきっと低いです。念のためZipファイル名を長くし、解凍パスワードも強固にしました。
ダウンロードしてもらったらすぐに管理画面からファイル削除して、終了です! 無料枠10GBを超える50GBを扱いましたが、今のところ課金も発生していない様子です。